簿記がわかるようになるためには、分からない理由に挙げたことの裏返しになりますが、次の3ステップをふまえるとよいと思います。
ステップ1:貸借対照表を最初に理解する
ステップ2:簿記の仕訳は貸借対照表を組み立てるイメージを持つ
ステップ3:最後に損益計算書を理解する
それでは、順番に見ていきましょう。
ステップ1は、貸借対照表を最初に理解することです。
なぜ、貸借対照表が最初なのかといいますと、簿記はずばり貸借対照表を組み立てるパズルゲームと言えるからです。私自身簿記が最初さっぱりわからなかったのは、貸借対照表の仕組みや読み方を知らない状態で、いきなり簿記の仕訳の細部から覚えようとしたからと今振り返ると思います。
簿記をやってみて、なんだかわかったようでわからずモヤモヤするという方は、今一度貸借対照表を理解するとよいかもしれません。それでは、この貸借対照表とは何かをご説明します。
貸借対照表とは一時点の財政状態を表す書類です。資産、負債、純資産の3つの要素から構成された表です。財政状態とは、平たく言えば、その人の(あるいはその会社の)一時点のお財布の中身はどうなっているかがわかる表です。
貸借対照表をイメージしやすくするため身近な例にあてはめてみたいと思います。身近な例として、とある二つの家庭の家計状況を比較しながら考えていきます。
突然ですが質問です。
Qお金が100万円ある家庭と500万円ある家庭ではどちらがいいでしょうか?
・・・答えは、わかりません。
なぜならこの問いではお金という一つの側面しか見ていないからです。一概にはどちらがよいかとは言えません。例えば、100万円持っている家庭では、これが全て自分たちのお金(仕事で稼いで手に入れたもの)だったらどうでしょうか。一方で500万円のお金は全て親戚から借金して得たお金だったらどうでしょうか。一口にお金といっても手に入れ方が変われば状況も全く異なってくることがわかると思います。
先ほどの例でざっくり言うと、今お金はいくら持っていて、そのお金はどのように手に入れたのかが(借金か自分のお金か)わかるのが貸借対照表です。
お金など金銭的価値のあるものを資産(しさん)といいます。今抱えている借金など後で誰かに返さないといけないものを負債(ふさい)といいます。そして、資産から負債を差し引いたもの、すなわち純粋に自分のものである財産を純資産(じゅんしさん)と言います。貸借対照表はこの資産・負債・純資産の3つの要素から成り立っています。因みに純資産は資本とも言います。具体的に図で表すと次のようになります。
左側に資産、右側に負債と純資産という配置です。資産=負債+純資産という式が成り立ちます。
この貸借対照表の数字というのは、とある一時点の数字を表しています。例えるならば、今日風呂上がりに測った体重は60キロだったというときのこの60キロです。1月末の貸借対照表の数字というのは、1月末時点のお財布の中の状況を表したものなのです。
貸借対照表の読み方を理解すると、家計の財政状態が一目でわかるようになります。
それでは先ほどの家庭の家計状況をそれぞれ貸借対照表に当てはめてみたいと思います。
●お金100万円は全て自分で稼いで得た家庭の場合
左側の資産に現金100万円、右側の純資産に100万円となります。右側がお金をどうやって手に入れたかを示す枠となります。自分のものとして手に入れた場合(後で誰かに返さなくてよい完全に自分のもの)は純資産の欄に記載します。
この貸借対照表からは、「今現在現金を100万円持っていて、借金もなく純粋に全部自分のものなのか」、と読み取ることできます。
●お金500万円は全て借金で得た家庭の場合
続いて、もう一方の家庭をみてみましょう。左側の資産に現金500万円、右側の負債に500万円となります。繰り返しになりますが、右側がお金をどうやって手に入れたかを示す枠となります。借金で手に入れた場合(あとで返済しないといけないもの)は負債となります。
以上を踏まえて、もう一度先ほどの質問をします。
Qお金が100万円ある家庭と500万円ある家庭ではどちらがいいでしょうか?
先ほどと見え方が変わったのではないでしょうか?
左側の資産だけ見たら一見、たくさん持っている500万円の家庭の方が良いように見えます。ですが、右側を見ると、借金で得たのか自分で稼いで得たものなのか違いが一目瞭然です。もちろん他にもいろんな状況が考えられるため一概には言えませんが、他の条件が同じだとしたら前者の貸借対照表がよいと判断できるのではないでしょうか。
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